前編では、ポリ塩化ビフェニル(PCB)とは何か?そしてPCB特措法の概要や期限、罰則について解説しました。
後編では、実際にPCBが含まれている可能性がある機器の種類や、それぞれの設置場所、交換の具体的なポイントを詳しく解説します。
キュービクル内でPCBが使用された代表的な機器とは?
キュービクル更新や交換を行う際、以下の機器がPCB含有の可能性が高いです。
機器名 | 主な使用目的 | PCBの使用部位(旧型機器) |
変圧器(トランス) | 高圧から低圧への電圧変換 | 絶縁油(冷却材として) |
コンデンサ | 力率改善・電圧安定化 | 絶縁油(誘電体内部) |
リアクトル | 過電流制限・突入電流抑制 | 絶縁材や鉄心周辺の部品 |
変圧器(トランス):見落としがちなPCBの温床
どうしてPCBが使われていたのか?
かつての変圧器は、高温に耐える冷却・絶縁用オイルとしてPCBを使用していました。特に1972年以前に製造されたものには高濃度PCB含有の可能性が高いです。
見分け方と確認ポイント(目安)
- 製造年が1972年以前(1972年がPCBの製造、輸入が禁止された年)
- 銘板に「PCB」「JIS C 2320」などの記載
- 絶縁油の臭気・色の変色
- メーカーに型番照会でPCB含有の可否確認可能
交換のポイント
- 安全に絶縁油を抜き取り、PCB分析を実施
- PCB含有が確認されれば、JESCO(中間貯蔵・環境安全事業)などへ処分依頼
- 新設する変圧器は、非PCB製品かつ高効率変圧器を選定(補助金対象になることも)
コンデンサ:小型ながらリスクは大きい
どこにあるの?
コンデンサはキュービクル内で力率改善や電圧調整に使われており、特に静電容量が大きい施設(工場・病院など)では多数設置されています。
なぜPCBが使われた?
高誘電性と耐熱性が求められるため、かつては誘電体内部にPCBを充填したオイルコンデンサが主流でした。
PCB含有コンデンサの特徴
- 銘板に「CONDENSER」「KOBE」「OKAYA」など旧メーカー名が記載
- 製造年が1971年代以前
- 液漏れ、爆裂、異臭などの外観劣化
交換・処分のポイント
- まずは保守点検で型番・製造年を確認
- PCB分析が必要な場合は専門業者へ依頼
- 代替はドライタイプの**無電解油コンデンサ(非PCB)**が主流
- 配電盤改修とセットで工事することで、コスト最適化が可能
リアクトル:見逃されやすいが確実にチェック
リアクトルとは?
リアクトルは、突入電流や高調波を抑制するために使用され、進相コンデンサと直列に設置されることが多い機器です。
PCBが使われた理由
リアクトル内部の絶縁や、磁気回路部分の冷却・安定化のためにPCBを使用したケースが報告されています。
見落としがちなリスク
- コンデンサとセットで設置されており、交換忘れが多い
- 銘板が腐食・剥がれているケースも多く、判別困難
- 高所や配線の奥まった部分にあり、点検時に発見しにくい
確認と交換の手順
- コンデンサ周辺の機器を全て点検
- 形式・年式が不明なら、PCB含有の可能性として扱う
- セットで交換・処分が基本(分析・工事を一括発注)
キュービクル全体を「非PCB機器」へ更新する流れ
PCBが含まれている可能性のある機器を放置することは、法的リスクだけでなく企業の社会的信用にも関わります。
以下の流れで、キュービクルの安全・法令遵守・効率化を実現しましょう。
ステップ1:現地調査・機器点検
専門業者に依頼し、全機器の型番・製造年・使用状況を調査
ステップ2:PCB含有分析
必要に応じて絶縁油の採取・分析。JESCOの判断基準に基づき識別
ステップ3:届出・行政連絡
PCB含有が確認されたら、都道府県に届出を行い保管管理台帳を作成
ステップ4:交換・処分・更新
対象機器をPCB非含有製品に交換。処分はJESCOなど適正ルートで実施
ステップ5:今後の保守契約見直し
更新後はメンテナンス契約もセットで行い、再発防止と長寿命化を図る

補助金や支援制度の活用も
環境省や経済産業省では、PCB廃棄物の早期処理を支援するために、以下の制度を実施しています:
- PCB処理費補助金
- 設備更新支援補助金(ZEB支援などと併用可能)
- 地方自治体の独自補助制度(ご自身の市町村にご確認ください)
中編まとめ|キュービクル機器の「見える化」と法令対応が未来を守る
ポリ塩化ビフェニルは目に見えません。
しかし、その影響は見過ごせないほど大きく、放置してしまえば企業としての信頼と安全が損なわれることになります。
最後に再確認!
- 古いキュービクルの中には、まだPCBが残っている可能性がある
- 見落とされがちなコンデンサ・リアクトルのチェックも忘れずに
- 処分期限を過ぎると、行政処分や罰金のリスクも
- 法令を守って更新すれば、安全・省エネ・企業価値向上に繋がる