工場やビルでキュービクルの更新工事を計画する際には、キュービクル本体だけでなく高圧ケーブルの交換も同時に検討されることが少なくありません。
キュービクル内の機器を新しくしても、そこへつながる高圧ケーブルが古いままでは、設備全体の信頼性が十分とはいえないケースもあります。
実際の現場では、
- 高圧ケーブルの被覆が劣化している
- 端末処理(ストレスコーン・ケーブルヘッド)の老朽化が気になる
- 過去のトラブルをきっかけに「一度きちんと更新しておきたい」
といった理由から、「キュービクル更新」と合わせて高圧ケーブル交換工事を行う計画がよく立てられます。
この記事では、
「キュービクル 更新」を検討している方向けに、実際に現場で行われる高圧ケーブル交換工事の流れをわかりやすく解説します。
※高圧ケーブルの交換工事は、電気工事士・電気主任技術者などの有資格者が行う専門作業です。以下はあくまで内容理解のための説明であり、DIY手順ではありません。
キュービクル更新と高圧ケーブルの関係
「箱」だけでなく、ケーブルも古くなる
「キュービクル 更新」というと、盤本体や内部機器の入れ替えをイメージしがちですが、実際にはケーブル側の劣化も重要なポイントです。
たとえば、次のような症状が見られることがあります。
- 高圧ケーブルの被覆が硬化・ひび割れしている
- 端末処理部の汚れ・ひずみ・ひび割れが目立つ
- 接続端子まわりで発熱や変色の跡がある
こうした状態を放置すると、地絡や短絡などの事故リスクが高まります。
そのため、キュービクル更新工事と同じタイミングで高圧ケーブルも更新し、受変電設備全体の安全性を底上げする考え方が一般的になっています。
高圧ケーブル交換工事の全体フロー
ここからは、キュービクル更新とあわせて行われることが多い高圧ケーブル(3芯)交換工事の一般的な流れを大まかに紹介します。
1. 停電計画を立てて、電源を落とす
高圧ケーブルに触れる工事では、まず計画的な停電作業が必須です。
- 電力会社と、停電する日時・範囲を事前に調整
- 工場の生産ラインやテナントに、停電の影響を案内
- 作業手順書や安全対策を社内で共有
当日の作業では、受電側の開閉器を操作して、対象となる系統の電源を停止します。
そのうえで、
- 高圧用検電器で無電圧を確認
- ブレーカーやスイッチに施錠・タグ付け(ロックアウト/タグアウト)
といった手順で、誤操作や感電事故を防ぐ安全措置を行います。

2. キュービクルを開けて既設ケーブルの状態を確認
無電圧が確認できたら、キュービクルの扉や点検パネルを開け、内部を目視確認します。
- 単線結線図・盤内配線図と現物の配線を照合
- 高圧ケーブルがどの機器(高圧遮断器・負荷開閉器・変圧器一次側)にどう接続されているかを確認
- R・S・T相および接地線(E)の位置関係を把握
このタイミングで、既設の配線状態を写真に残したり、マーキングをしておくと、工事後の確認やトラブル防止に役立ちます。
古い高圧ケーブルを取り外す工程
3. 端子からケーブルを外し、キュービクル外へ抜き取る
次に、古い高圧ケーブルを安全に取り外します。
- 高圧遮断器・負荷開閉器・変圧器一次側の端子からケーブルを外す
- 端子部や絶縁物の焼け・変色・腐食などを確認
- ケーブルクランプや支持金具を外し、ケーブルをキュービクルの外へ抜き取る
ケーブルの劣化状態を記録しておけば、今後の更新サイクルや保守計画を見直すときの参考になります。
新しい高圧ケーブルを接続する手順
ここからが本題の「接続作業」です。
新しい高圧ケーブルを引き込み、端末処理を行い、キュービクル内の機器に接続するまでの流れを見ていきます。
4. 新しい高圧ケーブルを引き込み・固定し、長さを調整
まず、新しい高圧ケーブルをキュービクルに引き込みます。
- ケーブルラックやクランプでしっかり支持する
- 許容曲げ半径を守り、無理な曲げやねじれを避ける
- 他のケーブルや機器の邪魔にならない配線ルートを選ぶ
そのうえで、
- 高圧遮断器・変圧器一次側端子までの距離
- 将来のメンテナンスで必要になる余長
などを考慮し、適切な位置でケーブルをカットします。
長すぎても短すぎても後々の作業性に影響するため、この段階での判断が重要です。


5. ケーブルの被覆・遮蔽を剥ぎ、導体を出す
続いて、端末処理のためにケーブル構造を所定の寸法で加工します。
- 外装被覆(シース)を必要な長さだけ剥ぐ
- 遮蔽用の銅テープ・シールドを指定寸法まで剥がす
- 絶縁体を決められた長さで切り、導体を露出させる
- 導体先端のバリを取り、表面をなめらかに整える
この加工寸法はメーカーの施工要領書で細かく指定されており、ずれるとストレスコーンの性能や絶縁耐力に影響します。



(各相をマーキングして、R・S・T相を間違えないようにする)
三相用の高圧ケーブルでは、各相を間違えないようにマーキングを行います。
- 例:赤 = R相、白 = S相、青 = T相 など
既設設備や図面の表記に合わせてマーキングしておくことで、復電後にモーターの逆転などが起きないように配慮します。

6. ストレスコーンを挿入して端末処理を行う
導体を出した後は、ストレスコーンやケーブルヘッドを取り付ける端末処理に進みます。
- 指定位置までストレスコーンを挿入
- 専用工具で圧着・固定
- 半導電層テープ・絶縁テープを決められた順番で巻き付ける
- 必要に応じてケーブルヘッド一式を組み立てる
ストレスコーンは、高電圧がかかる端子周辺の電界をなだらかにし、局所的な電界集中による絶縁破壊を防ぐための重要部品です。
この工程は高圧ケーブル交換工事の要となる部分で、熟練した技術が求められます。

7. キュービクル内の機器に接続する
端末処理が終わったら、キュービクル内の機器へ接続します。
それぞれの端子に対応するケーブルを接続し、圧着端子やラグを使って規定トルクでしっかり締め付けます。
- R・S・T相が結線図どおりか
- 接地線が正しく接続されているか
- 充電部が露出していないか(絶縁カバー・ブーツの有無)
といったポイントを一つずつ確認しながら、接続を完了させます。

検査から復電まで:工事完了までの最終ステップ
8. 目視点検と増し締め
接続作業が一通り終わったら、キュービクル内を総点検します。
- 端子の締め忘れ・緩みがないか
- ケーブルが金属の角やエッジに接触していないか
- 絶縁カバーや仕切り板の付け忘れがないか
- 配線経路が整理され、安全に通線されているか
キュービクル更新や高圧ケーブル交換工事では、この「最後の目視」がトラブル防止に大きく貢献します。

9. 絶縁抵抗測定・耐圧試験
新しいケーブルと端末処理の健全性を確認するため、
- メガーによる絶縁抵抗測定
- 適切な電圧・時間条件での耐圧試験
などを実施します。
測定結果は報告書にまとめられ、キュービクル更新後・ケーブル更新後の保守資料として保管されます。
10. 復電と運転確認
検査で問題がなければ、電力会社立ち会いのもと復電を行います。
- まず無負荷の状態で受電を開始
- キュービクル内の状態(表示ランプ・警報・保護リレー)を確認
- 負荷を段階的に投入し、電流値や端子温度の上昇をチェック
一定時間経過しても異常がなければ、高圧ケーブル交換工事は完了です。


まとめ:キュービクル更新とセットで「高圧ケーブル」も見直す
- 「キュービクル 更新」を検討する際には、高圧ケーブルの劣化や端末部の状態もあわせて確認することが重要です。
- 高圧ケーブル交換工事では、
- 停電・無電圧確認
- 既設ケーブルの取り外し
- 新ケーブルの引き込み・固定
- 被覆・遮蔽の処理とストレスコーンによる端末処理
- 高圧遮断器・変圧器一次側端子への接続
- 検査・復電
という流れで作業が進みます。
- これらはすべて、有資格の専門業者が安全管理のもとで行うべき作業です。
キュービクル本体の更新だけに目を向けるのではなく、
**高圧ケーブル交換工事まで含めた「受変電設備全体の見直し」**を行うことで、工場やビルの電気設備をより安全・安心に運用していくことができます。


