キュービクル関連機器の一つである「柱上高圧気中開閉器(PAS)」は、高圧受電設備において重要な役割を果たしています。電柱に設置されるPASは、電力供給の安全と信頼性を支える設備であり、特に波及事故防止の観点から欠かせない機器です。本記事では、PASの基本情報や役割、特徴、適切な管理方法について詳しく解説します。(写真はイメージです。)
柱上高圧気中開閉器(PAS)とは?
柱上高圧気中開閉器(Pole Air Switch: PAS)は、電力会社から供給される高圧電力を自家用設備に安全に引き込むための装置です。電柱上に設置されており、電気事故や異常発生時に電力供給を遮断する機能を持ちます。PASは主に以下のような場面で使用されます。
- 波及事故防止
需要家(工場や施設など)で事故(短絡・地絡など)が発生した際、電力会社側の配電線へ影響が広がらないようにPASが自動で動作し、電力供給を遮断します。これにより他の施設や地域での停電を防ぎます。 - 負荷電流の開閉
通常の負荷電流(例えば電気設備の起動・停止時の電流)やコンデンサー電流の開閉を行います。ただし、短絡電流(ショート時の異常に大きな電流)を遮断する機能はありません。
PASの構造と仕組み
PASの仕組みを理解するために、以下の2つの要素について説明します。
- 気中開閉方式
PASは「気中」で開閉を行います。これは、電気の流れを遮断する際に絶縁油やガスを使用せず、空気中で電流を断続する方式です。
メリット | 環境に優しく、メンテナンスが容易 |
デメリット | 気候(湿気や塩害)に影響されやすい |
この方式は絶縁油を使用する装置と比較して、設備全体が軽量化され、環境負荷も低いという特徴があります。
- 避雷機能(避雷器併設)
PASには避雷器(サージアレスタ)が併設されることが一般的です。これは、落雷などによって配電線に高い電圧が発生した際に、過電圧を吸収して設備を保護する役割を果たします。
PASの特徴
PASにはいくつかの重要な特徴があります。
1. 安全性を重視した設計
電力事故による波及事故を防ぐため、地絡事故や過電流を検知する機能(SOG機能)を備えています。これにより、事故が発生した際には素早く電力を遮断し、被害を最小限に抑えることが可能です。
2. メンテナンス性の向上
PASは空気を用いた開閉方式のため、絶縁油を交換する必要がなく、保守が比較的容易です。しかし、屋外設置機器であるため、外部環境による影響(塩害や腐食)を受けやすい点には注意が必要です。
3.寿命と更新のタイミング
PASの法定耐用年数はおおむね15年から20年とされています。耐用年数を超えたPASを使用し続けると、動作不良や事故リスクが高まります。特に地震や落雷などの影響を受けた場合には、早期に交換を検討することが推奨されます。
PASとキュービクルの関係
キュービクルとは、施設や工場で高圧電力を受電し、適切な電圧へ変換して使用するための設備です。PASは、電力会社から供給される高圧電力をキュービクルに安全に引き込むための重要な装置として連携しています。
1.受電設備の一部としての役割
PASが適切に動作しないと、キュービクル内の機器(変圧器や遮断器など)にも影響が及び、施設全体の電力供給に支障をきたす恐れがあります。
2.PCB法への対応
日本では、ポリ塩化ビフェニル(PCB)を含む機器の廃棄が法律で義務付けられています。古いキュービクルや関連機器にPCBが使用されている場合、PASを含めた一斉更新が必要です。
PASの設置とメンテナンス
PASは、施設や工場の高圧受電設備の一部として設置されるため、以下のポイントを押さえたメンテナンスが必要です。
定期点検の実施
年1回の法定点検が義務付けられており、開閉器の動作確認、外装の腐食チェック、避雷器の性能確認などを行います。
環境に応じた対策
沿岸部や工業地帯では塩害や腐食が進みやすいため、外箱の防錆対策や定期的な清掃が求められます。
異常時の早期対応
異常が検出された場合は速やかに専門業者に相談し、必要に応じて交換または修理を行うことが重要です。
まとめ
柱上高圧気中開閉器(PAS)は、高圧受電設備の安全と信頼性を維持するために欠かせない装置です。波及事故を防ぎ、電力供給の安定性を確保する役割を担うPASは、キュービクルと密接に連携して機能します。耐用年数を超える前に適切な点検・管理を行い、安全な電力設備運用を維持しましょう。
キュービクル更新や電力設備の管理に関してご不明点があれば、専門家による無料相談や現地調査を活用することをお勧めします。